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今田束『實用解剖學』卷一 明治33年十一版

今田束(1850-1889)『實用解剖學』卷一 明治三十三年六月一日十一版 萬谷堂刊
今田束『實用解剖學』卷一 明治33年十一版(前半)
明治初期、我が国で最も早い時期に解剖学者になった人物が著した解剖学書。扉にあるように、この巻では骨格・靭帯・筋肉を扱っている。著者は四十にして亡くなってしまったそうだが、本書が永く使われることを希って遺族が同じく解剖学者の小金井良精に校閲を依頼し出した版であることが、序文を読むと判る。
すっきりとした線で描かれ、詳細に解説された各部の骨のひとつひとつを覧ていると、自然の造化の妙というものを改めて感じさせられる。勿論学術的にしっかりしたものながら、例えば人体の重心についての解説図など、どことなく遊び心も感じられるのは、著者の初学者のための腐心のたまものなのかも知れない。医学校などで教科書として使われた本のようだが、評判が高く短期間で版を重ねたことが小金井の序文にみえる。
今田束『實用解剖學』卷一 明治33年十一版(後半)
巻末には手及び足のX線撮像、そして「附録圖」として墨、赤、青の三色のインクを用いた解剖図が添えられていて、興味ある者には眺めているだけでもたのしい作りの本になっている。
なお著者は解剖模型を製作したことでも知られるが、内国勧業博覧会などで人体を模した工芸品の審査員を務め、また亡くなる少し前には美術解剖学も教えていたことが『大阪歴史博物館研究紀要』第15号に掲載されている内藤直子「中谷省古—見世物・医学・美術を横断した近代大阪の奇才—」
http://www.mus-his.city.osaka.jp/education/publication/kenkyukiyo/pdf/no15/pdf15_11.pdf
で紹介されている。早世していなければ数多くの解剖学的裏付けのある美しい、或いは面白い工芸品がもっと数多く生まれていたかもしれない、と思うと惜しい気持ちがしてならない。


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