0コメント

安東伊三次郎『女子鑛物教科書』大正04年訂正四版

安東伊三次郎(1874-1929)『女子鑛物教科書』大正四年十二月十日訂正四版 東京寳文館刊
安東伊三次郎『女子鑛物教科書』大正4年訂正四版(前半)
大正初期に出された、高等女学校向けの中等教育用鉱物教科書。
本書との比較を兼ねて、同じ著者の同時期の師範学校用教科書もちかぢか載せるつもりだが、まず初めに気付くのは後者に較べて前者の厚さが非常に薄い、ということ(後者の本文が百ページに対して前者はわずかに三十二ページ)。動物、植物とともに博物の授業で使われていたものだが、当時の女学校では鉱物の扱いは比較的小さかったものと思われる。実際、鉱業関係の仕事に携わる女性はそれほど多くなかったろうし、また一般には鉱物学は無味乾燥な学問ととらえらえていたらしいので、ある程度致し方のない部分はあろう。
序文にあるように、この改訂版では女子が必要とする知識を増やし、またその興味を惹くための事項やその図版を増やしたりしているらしいのだが、今のところ旧版を架蔵していないのでどこがどう変わっているのかは確かめられていない。
但し、明らかに女子向けの内容として、第四課に「寶石」が章立てられているのは興味深い。中等教育が男女別だった当時、鉱物の宝飾品としての効用が強調されているのは、本書に限らず男子向けの教科書にはない特徴といえる。
安東伊三次郎『女子鑛物教科書』大正4年訂正四版(後半)
博物の中でも鉱物分野は、動物や植物よりも産業に関わる部分が大きいため、塩田や油田、坑道での採掘や手選鉱など今日では見られなくなった昔の生産現場の様子が細密銅版画で見られるのも面白い。なおこの頃から少しづつ写真製版による図版が出始め、やがては銅版のものにとって替わっていく。
著者の安東は数多くの博物教科書を著し、また通俗書も幾つも書いている教育者。板倉聖宣+永田英治『理科教育史資料』第6巻(東京法令出版)によれば、小学校教師を一年務めた後高等師範学校に入り直し、卒業後は母校の岐阜師範に奉職、その後上京して早稻田中學校の講師をしていた際に本書を執筆している。

この記事へのコメント